研究概要 |
研究1では,簡便性・経済性を優先する食態度(簡便志向),食物および食卓状況から得られる快を希求する食態度(快希求),高塩分を含有する食物に対する嗜好(塩味嗜好),摂取抑制に特徴づけられる食行動(抑制的摂食),外発反応性に特徴づけられる食行動(外発的摂食),ストレスやつよい感情によって喚起される傾向をもつ食行動(情動的摂食),さらに主観的に知覚された心身の不調感(主観的健康障害)に注目し,それらの間になんらかの因果関係が存在するかどうかを検討した.主観的に知覚された心身の不調感(主観的健康障害)を従属変数側終末におき,共分散構造分析をおこない,仮のモデルを構築した.研究2では,研究1によって仮定されたモデルを,新しいサンプルを用いて,より詳細に検討した.研究1と異なる点は3点ある.第1に食物新奇性恐怖尺度を追加したことである.食物新奇性恐怖は,摂取する食物の範囲を狭くし,結果として栄養的に問題となる食行動を導く可能性がある.食行動と健康の関係を論じる場合に,欠かせない要因であるといえよう.第2は,データの処理を男女別に行った点である.食態度については,性差が顕著であり,今回のデータについても男女によりその構造が相当に異なった.第3は,主観的に知覚された心身の不調感(主観的健康障害尺度)を2因子構造のものとして処理した点である.これは本尺度が,「つかれ」を強調し,身体特定部位に限定的な症状に言及しない心理的疲労と,めまい,息ぎれなど身体的症状が比較的明瞭な身体的疲労との2因子構造をもつことが判明したためである.これらの変更点により,食行動と健康障害との関係は,より精緻に構造化され,食行動と健康障害との因果関係を指摘する結果を得た.研究3および研究4では,研究2でとりあげられた食物新奇性恐怖に関する実験調査をおこなった.研究5では,研究成果の異文化交差研究への発展の可能性について論じた.
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