研究概要 |
本年は,平成12年度から平成14年度におよぶ本調査研究の最終年度にあたり研究成果報告書をまとめた.報告書の構成と内容は以下の通りである. I.課題と方法.ここでは研究課題である団塊世代論についての基本的視点と調査研究方法であるライフヒストリー研究法について述べた.また調査の概要と対象者のプロフィールを説明し,インタビュー調査のプロセスにおいて調査対象者の「自己」と調査者としての「自己」をともにとらえる意義を指摘した.II.故郷を離れた団塊世代の男たちの生活世界.故郷を離れて首都圏に住む14名の団塊世代男性にライフヒストリー・インタビューをし,かれらの世代認職,ほかの世代との違い,仕事観,ジェンダー分業観,人生設計等についてまとめた.III.団塊世代の男たちのライフヒストリー.二人の男性のライフヒストリーを取り上げた.ライフヒストリーを跡づけながら,語りから団塊世代の特質を取り出そうと試みた.二人ともIIで取り上げた高学歴層の男性とは異質な人である.ひとりは永年,営業マンとして仕事だけでなく遊びも含めて男たちのネットワークのなかで生きてきた.家族をもちながらも,今後はひとりで生きていきたいという希望をもっている..もうひとりは,シングルライフを楽しんでいる人で,幼少期に父母を亡くし祖母と暮らしてきて経済的にも苦労してきたが,現在ではシングルであることを自由で気楽な生き方であると考えている.IV.まとめ.ジェンダー観では,男女の平等意識はもっているが,実際の生活では,家事参加は消極的で,理念と現実の実践とでは乖離が大きい.妻との「関係的自立」というよりも家族をふくめ誰にも迷惑をかけない生き方(死に方)を目指していて,その方法のひとつにシングル志向がある,という新しい声も聞かれた.
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