研究概要 |
本邦に於いて未だ基盤整備が極めて不充分な,精神障害者地域リハビリテーション(Community-based Rehabilitation:以下CBR)を可能にする条件を抽出し,北海道の地域基盤に適合する郡部CBRモデルの仮説的構想を得た. 2次医療圏・障害福祉圏域におけるCBRモデルは存立する地域社会に対する開放性・交流性,さらに授産や収益部門で産業基盤適合性を確保することが必要であり,この条件が満たされない場合は生活地域内に内在する資源であっても閉鎖性を免れず,当事者の社会的に開かれた回復像想定に困難が生じると看取された.特に大都市圏から隔絶し高度消費社会から疎外された郡部モデルは一定の対象規模即ち利用者の集積性を必要とし,本邦の小規模作業所レベルでは閉鎖空間になりやすく,むしろ米国のクラブハウスモデルに臨地住民に対する開放的サービスを加えるか,或いは本邦に於ける地域生活支援センターモデルに過渡的雇用(TE)を加え産業とリンクし,さらに地域住民と共有する事業部門を持つことで精神保健福祉に特化された機能というイメージを払拭することが期待された. 本研究の成果は以下で報告する予定である. International Congress of WAPR(Would Association of Psycho-social Rehabilitation),日本精神神経学会,日本精神障害者リハビリテーション学会,日本社会精神医学会 <初年次の作業> 1.北海道の現存資源の機能と利用者の期待を抽出するため郵送アンケートによる調査を行い,回収分のデータベースを作成した. 2.モデリングのための検討事例を全国から抽出し,資料提供乃至聴き取り調査の可否を打診し,北海道並びに検討対象事例の存在する自治体行政資料を収集した. <2年目の作業進捗状況> 1.本道内資源状況ならびに利用者状況調査集計結果の解析と考察. 2.モデル策定の準拠枠を得るため,法人施設を設置している地域で産業基盤の遷移が本道の状況と対比できる地域を再度検討・選択し地域調査・資料収集と行政資料の追加収集を実施し,得られたデータを事例化し考察した. 3.以上を総合して,英米の施設モデルと,その本邦への導入状況を勘案しCBRモデルを仮説的に構想した.
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