研究概要 |
〔I〕本研究の目的は人口資料を使用して、「東北日本型」の出生・死亡パターンを抽出・解明することである。同時に、研究代表者のこれまでの調査結果にもとづいて、人口行動に関する新しい仮説の構成を目指すことである。研究方法としては、19世紀〜20世紀初頭まで(約100年間)のオリジナル資料(人別改帳、懐婦書上げ、過去帳)を調査・収集・解読し、その結果をコンピュータに入力して数量分析を採用する。そうして、従来の通説や常識に再考をせまるような、東北型人口再生産パターンを抽出することを課題としている。具体的には、上記資料を相互に突き合わせて、精度の高い出生・死亡データベースを構築することが、最初にして最終の目的となる。 〔II〕本課題(基盤研究[C]\])の当初研究期間は4年(2000・3年)であったが、新たに4年計画(2003・6年)の継続課題(基盤研究[A])として、研究を深化させる機会をえた。そこで、平成15(2003)年度は移行年度と位置づけ、作業の重心を「新プロジェクトの準備」においた。従って、最終年度の成果として、出生と死亡に関わる論文作成ではなく、資料批判を展開した論文3点(平成12-13年作成)を編集・公表した。同時に人口趨勢の地域性に焦点をあてた論文の作成、具体的には天保飢饉のダメージを確定すべく、マクロ人口データすなわち仙台藩郡方970ヶ村人口の推計をおこない、斯界に貢献しうる水準の論文を作成した。 〔III〕前者の成果については、下記「11研究発表」の「図書」の項を参照されたい。後者の成果(論文)については、下記の知見3点がえられた。(1)宝暦飢饉が郡方人口に与えたダメージは、535,000人から517,000人へと34%減少させた点を考慮すると、予想に反し軽微だった。(2)天明飢饉は493,245人から413,191人へ14%減少させた。(3)天保飢饉は495501人から386,647人へと22%減少させ、大ダメージを与えた。結論はこうである。「東北地方の研究者はこれまで、漠然と『宝暦天明天保の三大飢饉』などと並記し、同等のダメージを想定してきたが、こうした『通説』『常識』は誤りではないか」ということである。
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