研究概要 |
本研究は,社会福祉現場での,実習中の事故を未然に防ぐための安全衛生教育プログラムを作成することを目的とした.特別養護老人ホーム等で社会福祉援助技術現場実習を実施した大学生を対象に以下の調査を実施・検討し,有用な成果を得た. 1)事故及びヒヤリ・ハット体験調査:事故およびヒヤリ・ハットの発生場所は,居室>廊下>食堂>浴室の順であった.事故内容は,転倒+転落で80%を超えていた.福祉施設での安全教育の重要性を明らかにした. 2)心理的事故及びヒヤリ・ハット体験調査:不適切なコミュニケーションによって,相手の心を傷つけたり,自尊心を傷つけたりすることを心理的事故と名付けた.学生の47%が実習中に心理的事故を体験した.心理的ヒヤリハット体験者は25%であった.心理的事故の加害者の内訳は、実習生本人》職員>利用者であり,一方,被害者の内訳は,利用者》実>職員であった. 3)実習生の疲労の実態調査:自覚症状しらべ(日本産業衛生学会)による疲労の訴え率を調査した結果,疲労回復のための休日の重要性を明らかにした.現場実習のためのストレス教育を取り入れる必要性を示した. 4)実習中の腰痛の実態調査:実習中に、44%の学生が腰痛を感じた.腰痛予防教育の必要性を示した. これらの成績をもとに「危険予知訓練シート」,「安全衛生教育プログラム」考案した.福祉現場では,勤労者に加えて利用者の安全衛生を確保しなければならない.さらに、サービスの質の確保・向上のためには,肉体的事故だけでなく心理的事故に注目する必要がある. 実習生の安全衛生の確保のためには,実習カリキュラムに安全衛生教育を取り入れる必要がある.一方,実習施設では,作業環境の整備や作業標準に基づいた指導を積極的に行う必要がある. すなわち,(1)学校側の事前教育,(2)実習生自身の事前学習,健康管理,(3)施設の労働安全衛生管理--が重要である.
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