本研究は、イギリスの痴呆症患者を対象に駆使される介護技術について、主として文献研究とイギリスにおける研究機関および施設の調査によりながら検討し、わが国における介護技術論の体系化に向けた一助にすることを目的にする。 本研究は、この目的に沿って作業を進めるために次の手順こ沿って行われる。 (1)痴呆症患者の規模と構成および生活援助の態様 (2)痴呆症患者を対象にする介護技術についての論争と論点 (3)看護技術の構成と介護技術の構成および両者の異同 (4)痴呆症患者を対象にする介護技術の原則と構成 (5)痴呆症患者を対象にする介護技術の介護職者養成課程における位置 本研究は、いくつかの特色や意義を持つ。第1に介護技術についての研究は、痴呆症患者を対象にする介護技術を含めてわが国では、ほとんどなされていないといえる。本研究は、イギリスを対象にこの種の作業の先鞭をつけることになる。第2に、痴呆症患者を対象にする介護技術を障害形態別介護技術の体系の中に独自に位置づけることである。これは、痴呆症患者を対象にする介護技術が独自に位置づけられていない現状のもとで少なくない意義を持つように思われる。 痴呆症患者を対象にする介護技術のあり方については、欧米の研究者の中で様々に模索的な研究が行われている。わが国においても、最近、高齢者痴呆研究・研修センターが設置され、その研究に着手し始めたばかりである。諸外国の調査研究の批判的な摂取は手がけられてはいない。 本研究は、こうした国内外の状況の中にあって、イギリスの先行業績とその手法にも学びながら、痴呆症患者の介護技術を独自に位置づけようとするものである。本研究で得られた知見は、わが国の痴呆症患者の介護技術を独自に位置づけることを可能にすると思われる。
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