研究概要 |
本研究の目的は,子どもの社会化過程において、親から与えられる影響として,次の四点を明らかにすることである.第一に,子どもの成長段階によって,親の教育意識や働きかけがどのような変化を遂げるのかを描き出す事.第二に,親の教育意識に地域による差があるのかを明らかにすること.第三に,親の階層によって子どもに対する教育格差が生じ,それが階層再生産につながってくる可能性があるのかを確かめること.第四の親の教育意識の中にジェンダーの問題がどのような形であらわれているのかを知ること,この四点である. まず子どもの成長段階による親子関係の変化については,小さな時に厳しかったしつけには子どもの成長につれて緩やかさがみられる一方,将来に対する意識が強くなり,現在を楽しく過ごそうとする友達親子的な関係は少なくなる事がわかった. 地域差と階層の問題については,親の子どもへの教育投資は,経済資本ではなく,むしろ学歴資本により特徴付けられ,大都市において階層関係がより大きく反映しているという結果が出た. ジェンダーについては,子どもの性別によって親の教育意識や教育行動にどのような違いがあるのかを分析した.学歴期待は男子に対する期待が強い一方,女子に対しては文化資本の伝達がなされるという、先行研究の知見を踏襲する結果に加え,本研究ではきょうだいの出生順位とジェンダーを組み合わせた変数に着目する事によって,より細かな社会化のバリエーションを明らかにすることができた。さらに母親のジェンダー意識・階層(学歴)と子どもへの性別社会化との関連については,ジェンダーフリー意識自体の階層・学歴による規定性と、学歴と就業形態との相互作用がみられる事が明らかになった.
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