研究課題/領域番号 |
12610246
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
教育学
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
高橋 智 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50183059)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2001年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2000年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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キーワード | 知的障害 / 教育学史 / 促進補償教育 / 特別学級編制 / 特別な教育的配慮 / デューイ実験学校 / 補助学級・学校 / 国民国家 / 促進教育 / 特別学級編成 / 鈴木治太郎 / 知的障害概念 / 近代化 / 「劣等児・低能児」 / 精神病学 / 治療教育学 |
研究概要 |
本研究では、知的障害教育に先行する精神病学、心理学・児童研究、教育学、感化救済事業などの領域における知的障害間題の顕在化要因と対応策を明らかにするとともに、とくに教育病理学、治療教育学、補助学級・学校教育学、「白痴」教育学などを中心とする欧米知的障害教育理論の「移入-実践への適用-論争と修正-普及・定着-制度化・体系化」の過程を検討し、これまでに未着手であった明治期の知的障害教育学史の構築を目的とした。この間の研究成果の概要は、以下のとおりである。 (1)知的障害という言説の成立は「近代の人工的所産」であり、近代国民国家の形成過程において国民国家の構成員(国民)としての資格(義務と権利)をもち得ない「欠格」対象として制度化され、国民国家から知的障害者を排除・差別(国民から分離・分化)していく論理として発明されたものである。国民国家に「有害・無用」の対象を選別し、その対象の国民資格の制限・剥奪を正当化することの中心を担ったのが、「国家・国政の科学」として、明治政府の保護育成を受けて成立した法医学・精神病学であった。法医学・精神病学のプロパーは、知的障害者を国民国家に有害・無用な存在ととらえ、それを裏付ける根拠として「生涯にわたり全く改善することのない叡智と人格の欠陥者」という知的障害言説を提示した。さらに知的障害者を「法的な無能力者」として規定し、その国民資格を制限・剥奪するための診断・判別システムの確立を、法医学・精神病学の課題とすべきことを積極的に提起したのである。 (2)明治後期における国民教育の整備・拡大、多様な子どもの公教育への包摂に伴う学力・人格・健康問題の顕在化のなかで、特別教授などの促進教育実践がどのように成立したのかを明らかにするために、促進教育と密接な関係を有した児童研究や実験教育学において、子どもの能力差がどのように発見され、それが教育現場における学業不振問題の認識や教育実践・教育論にどのような影響を与えたのかを検討した。 (3)知能測定法標準化実験に取り組んだ大阪市視学・鈴木治太郎の適能教育論、および大阪市教育部によって計画設置された特別学級編制の意義と限界について検討した。その結果、(1)鈴木の適能教育論が「智能」に応じた通常教育の改善・修正・分化を提起する性格を有しており、通常教育に特別学級編制を導入する論理となったこと、(2)大阪市特別学級が、鈴木の適能教育論、教育実践現場における学業不振問題認識、それに基づく特別な教育的配慮の必要認識が合致することで成立した学級教授の一形態であり、通常教育における促進教育の一形態であったことが明らかとなった。 (4)補助学級・学校教育学はドイツ・北欧を中心に成立・発展し、各国に影響を与えていく。日本も積極的に移入した補助学級・学校教育学の原型を探るために、19世紀末から20世紀初頭のスウェーデンにおける補助学級・学校教育学および教育実践の動向の解明に努めた。 (5)義務教育における学習困難児問題の顕在化は、産業化と資本主義が急激に進展した19世紀末のアメリカ合衆国においてとくに顕著であった。それに対し、多様な学習困難児のニーズに応じる教育の理論と実践の創造が、デューイ実験学校を中心にして着手される。実験学校の特別な教育的配慮の実践を検証し、多様なニーズに応じる個別化と協同の教育原理を明らかにした。
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