研究概要 |
本研究における教育相談体制は,アメリカにおけるキャリアエデュケーションにみられるシステムズアプローチの枠組をベースに,総合的ガイダンスカウンセリングならびに日本の学校心理学の実践を加味し,学習面,進路面,心理・社会面に問題を抱える生徒を援助するチーム(Student Support Team,以下SSTと略)による生徒援助システムを日本に適合するよう開発を行った。SSTモデルは,(1)生徒のアセスメント,(2)援助課題の特定,(3)援助目標の策定,(4)個別援助計画の策定,(5)援助実践,(6)総括的評価,という一連のシステマティックな援助サイクルを持っている。また,SST実践はMicrosoft社のAccess2000によって独自開発したSST援助データベースソフトによって,モニタリングを行っている。兵庫県下の小規模・中規模中学校において,学習不振や不登校傾向をもつ生徒に対してSSTを実践し,生徒および教師組織への効果測定を行った。効果測定は,生徒に対してはSST実施前後に行った「教育相談のための綜合調査」(大阪心理出版)の得点比較および学習成績の変容比較,教師に対しては「学校経営診断カード(児童・生徒指導編)」(牧昌見編)による組織評価の変容比較を実施した。その結果,SST実施後に生徒の学習面・情緒面・社会面での改善や学習成績の上昇が認められた。また,教師集団もSSTを通して,援助目標の共有化や組織運営面での改善が促進された。したがって,SSTは短期間であったが,生徒や教師集団への高い変容効果をもつことが明らかとなった。
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