本研究において考察の対象としたのは、大正自由教育運動をリードした師範学校附属小学校・私立学校の教室環境並びに大正自由教育の教育思潮に触発された公立小学校の教室環境構成である。日本の近代学校においては、明治以来多人数の子どもを対象とする画一的な「一斉教授法」が普及し、教室がそうした教授にふさわしい構造となっていた。しかし、大正自由教育運動が展開されて、「一斉教授法」が打破され、子どもたちが主体となる学習あるいは自治活動にふさわしい教室空間に作り替えようという試みが展開された。現場の教師が、教室内の机の配置や壁面の掲示等においてどのような工夫を凝らし、教室空間をどのように教育的に作り替えようとしたのかという視点から、報告書をまとめた。その目次を示すと次のとおりである。 はしがき I 師範学校附属小学校における教育空間の創造--奈良女子高等師範学校附属小学校のばあい-- はじめに 一、木下竹次の「普通学習室」論 二、大松庄太郎らの「教室経営」の試み おわりに II 私立学校における教育空間の創造 はじめに 一成城学園 二自由学園 三児童の村小学校 四自由ケ丘学園とトモエ学園 おわりに III 公立小学校における教育空間の創造--学校建築に対する教師の要望と教師の参加による学校建築-- はじめに 一、関東大震災後の東京市復興小学校の建築に対する現場の教師の要望 二、東京市麹町区番町尋常小学校における教育環境の創造--教師の参加による学校建築--おわりに
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