研究概要 |
本研究においては研究の対象地域を豊前・豊後を中心とした。そして,九州各地及び中四国の各地域を交流・比較の対象とした。その実績は以下のとおりである。 1豊後府内藩の「府内藩記録」(17世紀末〜19世紀半ば,160冊余,県立大分図書館所蔵)から被差別部落関係の記事を抜き出し,基本史料として収集した。それを踏まえて西日本有数の祭礼市である浜の市における被差別民衆の役割,芝居入場をめぐる被差別民衆の抵抗を明らかにした。 2豊後杵築藩地域における被差別部落関係史料を収集し、その配置,その職務,一般民衆との関係、被差別部落をめぐる事件などを明らかにした。また,文化2年に発生した被差別部落民衆の逃散事件とその意義を逃散先である島原藩関係の史料を併用して発生年代とその内容について詳細に明らかにした。また豊後臼杵藩の「御会所日記」「古史捷」などから臼杵藩における被差別部落についてまとめを行った。 3被差別部落の形成・確立について,幕府領・臼杵藩領を中心に,17世紀後半から18世紀初頭の村方史料及び18世紀半ばの村方史料を用いてその具体的な状況について明らかにした。日向延岡藩(内藤家)の豊後支配の記録である「千歳役所日記」(18世紀半ば〜19世紀半ば,100冊余,明治大学所蔵)から被差別部落関係の記事を抜き出し,基本史料として収集した。その分析は今後の課題である。 4各藩領の分析を踏まえ,二豊地域における被差別部落史の形成及び展開についてのまとめを行った。
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