研究概要 |
「沖縄県宮古・八重山方言の調査研究-伊良部島佐良浜・西表島祖納方言を中心に-」というテーマで,2000年度から2001年度にかけて科学研究費補助金の交付を受けることができた。テーマの実施計画に従って,2000年度には西表島祖納方言の音韻・活用・助詞の用法などの体系調査を実施した。同様に,2001年度には伊良部島長浜方言の体系調査を行なった。初期の計画では伊良部島佐良浜を調査する予定であった。しかし佐良浜は池間島かちの移住集落であることがわかった。そこで,もとの伊良部方言を知るには佐良浜以外が望ましいと判断し,長浜方言を調査対象として選定した。二つの方言とも70代以上の話者を中心に調査を実施している。それゆえ比較的もとの方言を記録することが出来た。音声面・文法面でも貴重な資料を得ることが出来た。しかしまた共通語の影響を大きく受けていることもわかった。たとえば長浜方言では,もとは[u]母音であったものが共通語の影響を受けて[o]母音で発音される場合がよく観察される。同様にもとなかった[e]母音が新しく使いはじめられているということも観察された。このようにもとの特徴的な音声や語彙などが70代以上でも失われつつある。そのような状況にある長浜方言を記述にとどめることが出来た。若い世代ではもとの方言は次第に失われて,共通語に取って代わりつつある。その調査結果については研究成果報告書として2002年3月に公刊する予定で,現在作成を進めているところである。
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