研究課題/領域番号 |
12610484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
英語・英米文学
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
清水 徹郎 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (60235653)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2003年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2002年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2001年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2000年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | ベケット / マーロウ / キッド / シェイクスピア / オヴィディアニズム / 古典受容 / 現代演劇的手法 / 西洋古典 / 書き換え / Ovid / Metamorphoses / 古典文学受容 / Marlowe / 古典 / 20世紀演劇 / タイタス |
研究概要 |
古典文学の模倣と書き換えを行ったジョイスやT・S・エリオットなどのモダニストたちの関心の一つに、伝統の継承と断絶の問題があった。サミュエル・ベケットでは断片化して脈絡の不明瞭なテクストの記憶が、郷愁あるいはアイロニーの形で、我々に遠い文学的伝統の重みと継承の難しさを訴える。このような、古典との距離をめぐる20世紀のある種の演劇的発想と類似の手法が、英国ルネサンス演劇の中にも見られる。本研究は1580年代のクリストファー・マーロウやトマス・キッドの時代に遡り、古典の書き換えあるいは模倣とアナクロニズムの問題をめぐって、上記のような20世紀的な手法との類推を手がかりの一つとして、ルネサンス期以降の詩人の位置と意識とを考察した。ヘンリー八世の時代に始まった英国宗教改革後の精神状況は、19世紀末以降の「キリスト教後」の精神状況と、ある面で類推可能であり、詩と演劇の形式にも似たものが現れた。マーロウ、キッド、若いシェイクスピアらが新しい大衆劇場のために英国独自の悲劇を創造する過程において、オヴィディアニズムとセネカニズムを中心とする古典の伝統を模倣し書き換える作業のアナクロニズムに関する自覚とその対処法が、それぞれの詩人において微妙に異なった。本研究の結果明らかになってきた状況は、草創期の英国悲劇の作者たちがセネカニズムの束縛と問題点を克服する試みの中に、社会との絆や家族間をめぐってきわめて英国的関心が見えることである。それは一方で英国宗教改革と北方ルネサンスの特殊事情を反映するものであり、他方では、そのような社会的・精神的状況下における個々の詩人の感性と思想が明らかになる場でもあった。マーロウが多用したオヴィディアニズムをシェイクスピアが継承したが、後者において2つの伝統が劇的に融合し、一つには、宗教改革後の家族と女性をめぐる問題を提示する手段として古典が応用されるようになった。本研究成果についてはその一部分を2004年10月のシェイクスピア学会で発表する予定である。
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