配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2002年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2001年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2000年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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研究概要 |
本研究は,生成文法理論で仮定されている言語の計算処理と意味的側面の脳内基盤がいかなるものであるかを探るために,文法障害の実証研究を中心としつつ,脳磁界計測法も同時に用いて,文法の脳内処理メカニズムを解明しようというものである.レキシコン(意味)と統語(計算)の接点については,二種類の使役文(語彙使役文とサセ使役文)を用いて失語症患者を対象に実験を行った結果,これらの概念の区別を支持する神経心理学的証拠を得た.統語計算に焦点を当てた研究では,かき混ぜ文を取り上げ,失語症と脳磁計による実験を行った.失語症患者を対象に行った実験では,移動した要素と元の位置との距離ではなく,移動の有無が理解度を決定する最大の要因であることが分かった.脳磁界計測による実験では次の3点が明らかになった.(1)標準語順文に比して長距離かき混ぜ文では,第二第三名詞にて処理の記憶負荷を反映する脳活動の高まりを認めた.(2)この活動の脳部位は前頭部から側頭〜頭頂部にかけて個人差が認められた.(3)構文の種類に関係なく300ミリ秒前の早い潜時帯で,左側頭葉前部(含む側頭極)にて活動を認めた.これは格助詞に反映される文法関係がこの部位で処理されていることを示唆する.次に,意味と統語の区別を脳磁界計測により測定した結果,意味処理を反映する選択制限違反文では左下側頭回後部に,統語処理を反映する疑問詞の違反文では,左前頭下回近傍と島回にそれぞれ活動の発生源を認めた.これより意味処理と統語処理が,脳の異なった部位で行われていることが確認された.現在,これらの実験結果およびその知見を統合して,統語計算の脳内アルゴリズム理論の検討を行い,モデルとして発表するための準備をしている.
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