研究概要 |
本研究の実績は単行本『韓国語 語彙と文法の相関構造』(太学社,韓国ソウル.A5判.444ページ.2002年2月刊)と2001年に発表した6編の論文で公開している.『韓国語 語彙と文法の相関構造』においては,自動翻訳をめぐる基礎研究にかかわる理論的な諸問題を,研究代表者のこれまでの研究をふまえて,文構造論,待遇法論,ムード・モダリティ論,接続形論,名詞論といった多角的な観点から整理した.文構造は自動翻訳の根幹にかかわる問題であり,待遇法およびムード・モダリティは,日韓自動翻訳の最も弱い環ともいうべき問題である.接続形もまた,日韓自動翻訳においては誤訳の温床ともなっている文法形式である、名詞論は,名詞のカテゴリー化を論じたもので,自動翻訳におけるレキシコンの構造を形作る原理にかかわる問題である.6編の論文では,音声にかかわる問題,単語結合論,辞書論,オノマトペ(擬声擬態語)論,朝鮮語教育論の観点から追究した.自動翻訳の対象は,音声言語と文字言語がありうるが,その一方への言及である.単語結合は,単語と単語が結合し,新たな命名単位となって文の構成単位となるもので,自動翻訳の統辞論的な問題と語彙論的な問題の橋渡しをなす決定的な課題である.レキシコンは,単語結合を取り込む形で構成されねばならない.オノマトペは,日本語と韓国語の語彙的な対応が成り立ちにくい分野であり,自動翻訳には欠かすことのできない問題である.いずれの論考も,当該の研究テーマのみならず,テーマを基礎にした,関連領域への言及を多数含むものであり,本研究の豊かな可能性を示すものでもある.なお,既存の自動翻訳ソフトウェアの評価は今後の課題となる.
|