平成12年度および13年度にわたる本研究の実績は、(1)放送制度の理念に関わる研究、(2)公共放送の役割とその財源に関わる研究、(3)通信事業の規制のあり方に関わる研究、および、(4)放送と通信の融合に関わる研究に分けることができる。 (1)に関しては、表現の自由の保障される放送について、なぜ特殊な規制が正当化されるかが、憲法学上議論されてきたが、放送のデジタル化が従来の憲法学のとらえ方にどのような修正を要求することになるかを検討する必要が生ずる。結論としては、伝統的な憲法学の通説に代えて、マスメディアの表現の自由に関するとらえ方の修正、および、放送の規律根拠論の修正を提唱することとなった。この問題は、(2)の問題と深く関連する。公共放送が果たすべき役割も、全マスメディアが社会に対して果たすべき役割の関数だからである。結論としては、放送サービスが有するさまざまな特殊性(公共財、経験財、価値財等の特性)が公的介入を要請するものの、考えられうる政策上の選択肢の中では、日本のNHKや英国のBBCのような、特殊な財源を持つ公共放送事業体の設営が最善であることを示した。 デジタル化は放送と通信の融合の問題((4))の喫緊性を強めることとなるが、それを検討する前提として、(3)の通信事業に関する規制のあり方を検討する必要がある。ここでも、通信サービスの持つさまざまな特殊性に照らして、通信固有の規制を加えるべき根拠が示され、他の事業分野と異なり、通信では規制緩和が必ずしも競争促進につながらないこと、また、民営化と競争促進とが政策上の不整合を起こす局面のあることが示された。
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