研究概要 |
コンピュータ・システムやそれを世界規模で繋ぐコンピュータ・ネットワークの急速な発展・普及に伴い,それらを標的または犯行の手段とし,あるいはそれらが付随的な役割を果たす犯罪が増加してきているが,これらの犯罪の捜査においては,それらのシステムやネットワークの利用を跡付けたり,コンピュータ・システムや記憶媒体内に残された情報を発見し,保全することが重要となる。ところが,まさにその手続過程において,コンピュータ・システムやコンピュータ・ネットワークの特殊性から,法的にも様々な新奇かつ困難な問題が生じてくる。本研究では,(1)プロバイダーによる情報の保存・開示,(2)電子メール等の内容の閲覧と保全,(3)コンピュータ・システムおよび記憶媒体についての証拠収集・保全,(4)コンピュータ・ネットワークに接続されたコンピュータについての遠隔操作による証拠収集・保全,(5)外国に所在するコンピュータ・システムおよび記憶媒体についてのコンピュータ・ネットワークを介した証拠収集・保全,の各局面ごとに,そこで生じ得る法的問題点を抽出・分析し,諸外国での対応をも参考にしながら,法解釈論および立法論の両面にわたって,適切な解決策を見い出すことに努め,一定の成果を得ることができた。 これらの成果の主要な部分は,雑誌論文等として公表され(11「研究発表」),学界や実務界での議論の展開を促したばかりか,欧州サイバー犯罪条約へのわが国の加盟を機に,近く予定される関連国内法の整備作業にも貢献するものと考えられる。そして,こうした法制の整備や議論の進展をも踏まえて,本研究の成果をより本格的な形でまとめるべく,さらに作業を続行中である。
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