研究概要 |
権威的支配が崩壊し、民主政体へと変化する過程において、議会と立法府との関係はどのように変わるだろうか。ここには、政治学から見てきわめて魅力的なパラドックスが秘められている。理論的想定と、実体との間に、まるで逆の関係があるからだ。 権威的政体は、それが軍事政権であれ、より権威的な全体主義体制であれ、なんらかの形で立法権の独立性が阻害されていることが多い。それだけに、一般的にいえば、民主化とは立法権が、行政権に対して、その優位を獲得し、確保する過程であると想定することができる。 ところが実体を見れば、民主化の後に議会が影響力を拡大したとは必ずしもいえない。それどころか、民主化以後のほうが、かえって行政権における予算策定のイニシアティヴが強められた事例さえ存在するのである。この研究では、まずこの逆説的事実の確認を急いだ。 それではなぜ、このような異様な結果が生まれるのか。この研究では、国際環境と国内政治との関わりというもう一つの要因を考察に含めることで、国際市場と国内政治との間で政策の選択肢が限定された状況の中で政治変動が起こっていること、そのために国内の政治過程の変改に関わりなく、行政権力の政策決定過程にしめる役割が大きなままに保たれているという事情を示すことに成功した。 以上の結論は国際会議にKiichi Fujiwara,"Executiive-Legislature Relations in Democratization : External Resources of Political Change and Stability in East and Southeast Asia,"としてまず発表し、その上で現在学術雑誌Denmocracyへの掲載が準備されている状況にある。
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