研究概要 |
本研究の目的は,どのような条件のもとで環境や資源を考慮した経済が持続可能になるかという課題に対する一つの方法として,従来の国内を対象とした環境経済勘定を拡張して,地球環境や国際資源への影響を考慮する一国(この場合、日本)の環境経済勘定を作成することにより,より現実的な持続可能性を考察するものである。 今年度の研究実施計画と研究実績は次のようになった。 1.日本が排出する環境負荷物質と輸出入する資源の帰属費用の推計 日本が排出する環境負荷物質の量とその削減コスト,及び輸出入資源の量とその生産コストなどから,地球環境への帰属費用を推計した。ただし,資源の帰属費用の推計方法において議論があるものについて帰属費用の推計の対象から除外している。 2.従来の環境経済勘定体系に地球環境・資源への影響を組み込んだ日本の環境経済勘定の作成 既に推計されている日本国内の環境・経済統合勘定に,日本が排出する環境負荷物質と輸出入する資源の帰属費用を導入することにより,地球環境への影響を考慮する日本の26行27列からなる環境経済勘定を作成した。 3.作成した環境経済勘定と持続可能性の関係の考察 地球環境への影響を考慮した日本の環境経済勘定を1990年と1995年について試算した結果によると,環境調整済国内純生産は依然として増加していることがわかった。このことは,「経済的」持続可能性の十分条件にはならないし,「物的」持続可能性について何も言えないが,ある意味で,「経済的」持続可能性の必要条件を満たしていると言える。 4.環境制約と持続可能な発展の関係の理論的考察 国民所得の測定には二つのアプローチ,すなわちヒックス的所得と国民福祉,があり,環境経済勘定は前者に属しているので,理論的には国民所得の「真」の測度に対する一次近似であり,環境間題を取り扱うには不十分であることを示している。
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