研究概要 |
世界にはマクロ時系列統計を扱ったデータベースが数多く存在するものの,マクロ資本ストック推計を含んだものや各国間の直接投資の時系列データを含んだものは基本的に存在しない.したがって,我々は京都大学経済学研究科で維持する「京都大学環太平洋データベース」のデータに新たな資本ストックデータを追加し,また各国間の直接投資の時系列データを含んだものとし,もって環太平洋地域の国際関係の分析に広く基礎的データを供給しようとするものである. 具体的にはまず第一に,カナダの資本ストックデータが旧来のデータベースに追加された. また第二に,各国間の直接投資の時系列データとしては,アメリカ,カナダ,日本,韓国,オーストラリアといった環太平洋地域の先進国からアメリカ,カナダ,日本,韓国,中国,フィリピン,タイ,マレーシア,インドネシア,オーストラリアに対する直接投資が掲載されいる. しかし,本データベースの改訂作業は以上に止まらず,他のマクロ諸変数の更新やそれを使った各種国際連結計量経済モデルの作成およびその利用による予測や政策シミュレーションの結果の公表を含んでいる.今回の作業期間に追加された国際連結モデルは京都大学環太平洋計量経済モデルversion6,京都大学環日本海計量経済モデル,日中韓連結計量経済モデル,中国雲南省・ASEAN3連結計量経済モデルの4モデルであり,各種予測や政策分析の結果を容易く見ることができる. このうち,最初の京都大学環太平洋計量経済モデルversion6はアメリカ,カナダ,日本,韓国,中国,台湾,フィリピン,タイ,マレーシア,インドネシア,オーストラリアの11ヶ国・地域を含み,この地域間の直接投資関係を分析し,カナダへの中国移民の効果などを推計した.また,京都大学環日本海計量経済モデルは日本,韓国,ロシアと中国東北部を含み,日韓自由貿易協定のこの地域への効果を推計した.さらに第3の日中韓連結計量経済モデルでは日韓自由貿易協定と日中韓自由貿易協定の効果をそれぞれ計測した.最後のモデルは中国雲南省とベトナム,ラオス,ミャンマーを含み,この地域の自由貿易協定の効果を推定した.
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