研究概要 |
本研究は,いわゆる「社会福祉改革」といわれるもののプロセスのダイナミズムを「公私関係変容の構図」という視点で分析・整理し,今般の「社会福祉基礎構造改革」で段落した「改革」の全容が,はたして何から何へ向かう方向性を有するものであったかを論理的に整理すること,そして,今後の社会福祉の流れである「地域福祉」の中で求められる戦略的課題を明らかにすることを目的としたものである。 3年計画の最終年度であった平成14年度の研究は,次の3つの内容からなっている。 (1)社会福祉改革における公私関係変容の構図について,過去2カ年間の研究成果を整理し,公表した(小笠原浩一・武川正吾編『福祉国家の変貌』(東信堂)の第2部「分権化と公私関係の変容」所収の小笠原論文および蟻塚論文)。 (2)新しい地域福祉の理論的課題に関して,(1)の成果を踏まえて,「社会福祉」概念とは範域を異にする新たな範疇概念としての「地域福祉」像という視点から検討を加えた。とくに,正義論に関する近年の公共哲学の成果や「社会的排除」概念の検討などを媒介に,「主訴」への最適対応の機能連環としての「地域福祉」という考え方を提示した(小笠原浩一「福祉的地域社会像の構成」『生活起点』55号に集約されている)。 (3)(2)の考え方にたって,新しい地域福祉の戦略的・実践的方向性を検討し,「地域総合生活支援コンソーシアム」の考え方やその下における福祉施設ベースキャンプ論などを展開した(小笠原浩一「社会福祉法人の改革と施設運営の課題」『社会福祉研究』88号に集約されている)。
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