研究概要 |
今日の日本における紙・パルプ産業は、操業技術の効率性や原料樹種の多様性、古紙の再生率、製品の品質や風合いなどの高さ、市場の規模や多種多様性などで世界有数のレベルにあるとともに、王子製紙や日本ユニパック・グループのような少数の有力大企業による寡占的な産業構造が形成されている.しかるに、その一方で国内には依然として多数の中小企業が紙・パルプや紙加工業に独自な競争力をもって存在している。 大企業は、周知のように事業の規模や範囲の高経済性を追求して業界内での優位を形成してきたが、それが国内の紙・パルプ産業における企業間競争の優劣を左右するすべてではなかった。技術や市場、さらに経営の特性などから、むしろ中小企業であっても、相応な規模や範囲での最適経済性の追求を可能、かつ有利にする分野が少なからずあった。それらの分野を中心にして、中小企業も大企業と半ばモザイク的に競争、併存し得たのであり、その最たる分野としては、テイッシユ類などがあった。 なお,その場合、中小企業にとって存続の一つの要件になったのが、静岡県の富士市などのような特定の地域における紙・パルプ産業関係の産業集積であった。その結果、日本の紙・パルプ産業は、寡占化が進んだ一方で、依然としてかなり熾烈で複雑な競争関係を構造的に内包させてくるようになったのである。
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