研究概要 |
平成12年度〜平成15年度の期間において,日本学術振興会特定国派遣によるベルギーでの在外研究の機会もあり,文献・史料調査を進め,研究史を新たに整理し直すとともに,市場の発展が市場経済の形成にどのような関わりをもつかの考察を「ヨーロッパにおける市場の発展と市場経済」、また,市場統合と価格の平準化・同期化に関する考察を「中・近世ヨーロッパにおける地域間価格差と市場化」と題する論文にまとめた刊行した。これらの刊行で明らかにした当該研究の主な成果は,1.市場規制のもつ多義的性格の時間的変遷,2.物流と情報の分離がもたらす市場の中心性の多様性,3.複層的な市場統合の過程の3点である。なお、当初は当該研究以前の成果のみを内容とする予定であった『中世末期西ヨーロッパにおける市場と規制-15世紀フランデレンの穀物流通』に当該研究の成果である市場規制と流通の関係が穀物価格変動に与えた影響の考察および市場統合における市場規制の役割に関する考察を加えて、研究成果報告書作成費をその経費にあてることとした。フランデレン,ブラバント諸都市での史料調査に関して,詳細なデータを解読・収集する必要がある16世紀の会計帳簿などの史料がかなり未調査のまま残ることとなった。そこで,平成15年8月〜10月の日本学術振興会特定国派遣によるベルギーでの在外研究期間中にはヘント大学ならびにオランダ人文社会科学高等研究所との研究の連携を深め,引続き現地調査における協力とともに,当該研究の成果の海外での公刊においても協力を受けることとなった。
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