研究概要 |
2つの金融危機(日本のバブル崩壊とアジア通貨危機)の比較をおこなうにあたり,金融システムの不安定性をめぐる理論的メカニズムを解明する立場からさまざまな分析を行なった.「地価上昇率と経済成長率の間のグレンジャーの因果性テスト」(『不動産流動化と日本経済』第6章に所収,全宅連不動産総合研究所編),「地価上昇と経済成長の相互作用に関する分析」『季刊住宅土地経済』春季号において,土地などの不動産価格と貸出市場の関係を分析し,土地担保融資が一般的な銀行システムにおいて,地価とGNPの間には両方向の因果関係が存在するかどうかを理論・実証の両面から分析した. Bank's Capital Structure under Non-Diversifiable Risk,"において,マクロショックのために銀行が貸し出しリスクを完全に分散できないとき,銀行がどのような資本構成を構築するかを分析し,マクロショックが存在するとき,銀行は自ら自己資本を増やすインセンチィブをもつことをあきらかにした. "CapitaI Flight, North-South Lending, and Stages of Economic Development,"(International Economic Review)において,金融システムが不安定な国では,たとえ投資の収益率が高くても資本流出が生じる可能性を指摘し,資本自由化がかえって国家に壊滅的な影響をもたらす危険性を指摘している.
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