本研究は、ストア・ブランドに焦点を当てて、ブランドの意味形成と競争関係に関する内容を取り扱った。ストア・ブランドとは、「顧客の知覚空間上に形成された店舗あるいは複数店舗の総体であるストア・ブランド・レベルにおける意味の集合体」であり、顧客の店舗に対する意味形成は、店舗で提供される製品やその価格、店舗のサービスや雰囲気、それに関わる広告等のマーケティング活動を通して行われる。しかし、その店舗の製品やサービスに対する評価は、他の競争する店舗との相対的な関係のなかで決定されることも否めない。そこで、ブランドの意味をブランドの意味構造として、競争相手との関係性を競争構造としてそれぞれ捉え、ブランドの意味構造と競争構造との関係を見ることによって、競争構造の差異がストア・ブランドの意味形成にいかなる影響を与えているかを考察した。意味構造をコアの意味内容とフリンジの意味内容から構成されたネットワークとして捉え、競争構造として店舗立地を取り上げ、消費者の生活空間における店舗数の問題である量的側面と、どの競合店舗が同一の生活空間に存在しているかという質的側面に分類した。 ケースとして、ストア・ブランドに対するイメージが比較的安定しており、他店との比較が容易なファストフード店(マクドナルド、モスバーガー、ミスタードーナツ等の7社)を分析対象にし、質問紙によるアンケート調査を行った(被験者は関西および関東在住の女子大学生100名)。 その結果として、消費者の生活空間に多く存在しているファストフード店ほど、そのブランド評価が高いことがわかった。また、「消費者の生活空間にある競合店舗の組み合わせが異なれば、それぞれのストアブランドの意味内容も変化する」という仮説に対して、統計的に有意な結果は得られなかったが、消費者のファストフード想起集合との関係がある程度認められた。
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