研究概要 |
この二年間の研究によって次の成果を得ることができた。 一本目の論文はマレーシアにおいてマレー系と中国系住民が同様の労働価値観を持っているか否かをホフステッドのモデルを使い検証し、マレーシア人の労働価値観は高い権力の格差、低い不確実性の回避、個人主義、中等の物質主義を有するかを検討した。郵送でアンケート調査を行なった結果、マレー系と中国系マレーシア人の労働価値観の差異は少なく人種による違いは顕著ではなく、マレーシア人はどの人種も似通った価値観を共有することが明らかになった。それは,同じ社会状況、経済状況、で生活をしてお互いの価値観に影響を及ぼしあっているためであろう。今回の結果、マレーシア人はさらに平等でストレスの多い個人主義社会に向かっていることを示唆している。 二本目の論文はホフステッドの研究フレームワークを使いマレーシアと日本の労働価値観の違いを再考証するものである。次の4つの仮説を検証した。 1.日本のサンプルの権力格差はマレーシアより低い。 2.日本のサンプルはマレーシアに比べ高い不確実性の回避を示す。 3.日本のサンプルの個人主義はマレーシアに比べ高い。 4.日本のサンプルはマレーシアに比べより男性的(物質主義)である。 仮説4.日本の男性化はマレーシアより高い事が実証されなかったことは、この論文の最も特筆すべき点である。先進国である日本は環境保護にも関心を持って対処している。マレーシアは発展途上国であるがゆえ環境保護より経済発展のほうが優先される。研究者はホフステッドの調査結果や指数を参考にする時に、30年という時間的ずれを念頭に置く必要がある。このような研究成果を将来の研究に反映していきたい。
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