研究概要 |
研究期間の2年間,(1)キャッシュフロー情報の追加的な情報内容,(2)キャッシュフローとアクルーアル(accruals)の価値関連性について実証研究を行った.まず,実証分析するためのデータベースを構築・完成した.データベースは,東京証券取引所,大阪証券取引所および名古屋証券取引所に上場している企業の22年間(1978年-1999年)のデータからなっており,27,307社・年で構成されている. (1)キャッシュ・フロー情報の追加的な情報内容に関する研究 会計利益の構成項目-キャッシュフロー(CFO),短期アクルーアル,および長期アクルーアル-それぞれ項目の予測能力を調べた上で,3つの構成項目による予測モデル開発した.この予測モデルを用いて求めた,期待外会計利益(UEBXI),期待外営業運転資本(UWCFO)および期待外営業キャッシュフロー(UCFO)は,ともに価値関連性を有していることが確認された.特に,期待外営業キャッシュフローは,期待外会計利益および期待外運転資本を考慮に入れても,追加的な情報内容が認められた.また,各会計変数を「穏やかな変化」と「激しい変化」に識別するためのダミー変数を加えて分析することによって,同様な傾向のよりクリアな結果が得られた. (2)キャッシュフローとアクルーアルの価値関連性に関する研究 キャッシュフローの情報内容を分析するには,会計利益とアクルーアルを一緒に分析する必要があるため,Ohlsonモデルの一般化したバージョン(Ohlson1999)を用いた.分析モデルは,それぞれ4つの方程式からなるアクルーアル・システムとキャッシュフロー・システムで構成される. 分析に際して,超過利益の計算には分析期間の平均ROEを用い,年度別および業種別のダミーを追加した上で,見かけ上無関係な回帰(seemingly unrelated regression)で各システムのパラメータを同時に推定した. 分析結果,(1)両システムともに加重決定係数が高く(アクルーアル・システムが0.795,キャッシュフロー・システムが0.794),(2)キャッシュフローとアクルーアルは,超過利益の予測に追加的な情報価値をもち,(3)両方ともに予測関連性(forecasting relevance)と価値関連性(value relevance)をもつことが確認された.
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