研究概要 |
Vを3次対称行列のペアのなすベクトル空間とする.群G=SL(3)×GL(2)はVに作用して,(G, V)は概均質ベクトル空間になる.Lを整数係数の3次対称行列のペアのなすVの格子とする.x=(x_1,x_2)∈Lに対して,2元3次形式Φ_x(u, v)をΦ_x(u, v)=det(ux_1+vx_2)によって定義する.これは整数係数の2元3次形式である.Г=SL(3,Z)とおき,Г⊂Gとみなす.そのとき,γ∈rГのx=(x_1,x_2)への作用は,γx=(γx_1^tx_1γ, γx_2^tx_1γ)によって与えられる.明らかに,Φ_<γx>=Φ_xである.そこで,与えられた2元3次形式Φに対して,Φ_x=ΦとなるようなペアxのГ-同値類の個数はいくつあるかという問題が考えられる.J.Moralesはこの問題をもっと一般化して,いくつかの仮定の下で結果を出している.そこで,彼の仮定を設けないで何が結論されるかということを考察した.一般の整数係数2元n次形式に付随する整環がFrohlichによって定義された意味でweakly self dualであるための必要十分条件は,その2元n次形式が原始的であることを証明し,これを用いて,n次対称行列のペアの同値類の集合とn次代数体の整環のイデアル類群の2-torsion部分群の間の関係について考察した.特に,2次および3次対称行列のペアについて,Φが原始的でない場合についての結果を得た.この結果は,2001年7月にフランスのリール大学において開催された整数論に関する国際研究会であるJournees Arithmetiquesにおいて発表するとともに,学術論文として雑誌Acta Arithemeticaに掲載される予定である.
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