研究概要 |
本研究の目的は,ファノ多様体の反標準因子の豊富性条件を緩めた,反標準因子がnef & bigな非特異射影多様体(弱ファノ多様体)を分類しつつ,その構造を決定することであった.過去数年にわたり研究対象としてきた3次元弱ファノ多様体の分類結果は次のように整理される:端末特異点のみの反標準モデルを持つ非特異3次元弱ファノ多様体のうち,射影直線上のdel Pezzo fibration構造を持つものは,ファイバーのdel Pezzo曲面の次数をdとすると,それぞれのdの値に対して変形族の個数N(d)は,N(1)=2,N(2)=4,N(3)=7,N(4)=11,N(5)=11,N(8)=9,N(9)=3であり,それぞれの変形族に属する一般の弱ファノ多様体の構造も詳しく決定できる.この結果については,昨年度の論文(「Weak Fano threefolds with a del Pezzo fibration」発表雑誌未定)を修正加筆中である.また,N(6)については未解決である. 上記の研究による分類結果の一部のd=2の場合は,3次元弱ファノ多様体を重み付き射影空間束内の因子とみなすことにより同じ分類結果を得た.(「Weak Fano threefolds with a del Pezzo fibration of degree two」ワーキングペーパーシリーズEconomics and Information Studies 2001年3月). 重み付き射影空間束内の因子として現れる4次元弱ファノ多様体のうち,上記の3次元弱ファノ多様体に極めて近い場合について考察を重ね,いくつかの4次元弱ファノ多様体の例を構成した.分類論の立場からのまとまった結果は未だ得られていないが,射影空間束内の因子として現れるものについては報告者所属学部のワーキングペーパーシリーズEconomics and Information Studiesに「Weak Fano fourfolds in the projective space bundles over the projective line」と題して2002年3月に発表した.
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