研究概要 |
本研究の短期的な目的は,高次元ガスケット上の自己回避経路(self-avoiding paths)の漸近的振舞をくりこみ力学系の軌道解析を経由して解析することであるが,それは数学としてのくりこみ群の可能性という未解決の壮大なテーマの基礎的な課題と位置づけられ,本研究も確率モデルの解析手段としてのくりこみ群の手がかりを見いだすことがより大きな目的である.本研究期間の主要な研究成果は以下の通りである. 1.4次元階層イジング模型の自明性.4次元hierarchical Ising modelのくりこみ群の臨界軌道の存在を証明した臨界軌道はGauss固定点に収束する.Gauss固定点から離れた領域での大局的軌道解析は計算機による厳密評価で証明した.場の量子論の言葉ではIsing modelから4次元時空で相互作用しない自由場しかつくれないことに対応する. 2.シールピンスキーガスケット上の自己抑制過程.1次元空間上とSierpinski gasket上の連続時間自己抑制確率過程の1 parameterの族で,それぞれの空間上のself-avoiding processとBrownian motionを連続的に内挿するものを,くりこみ群に内挿parameterを入れることで発見した. 3.一般次元ガスケット上の自己回避経路の漸近的振舞い,d次元ガスケット上のself-avoiding pathの漸近的振舞いをくりこみ群から数学的に証明するためのくりこみ群の定式化を完成した. いずれも,くりこみ力学系の軌道解析と確率モデルの漸近的振舞いの関係を議論すること,および,くりこみ力学系の軌道の大局的構造という視点から研究することという研究課題の目的を実現した. 以上を含むこれまでの関連研究成果の基礎部分を整理した教科書の執筆も進行している.
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