研究概要 |
これまで,特異性スペクトル,自由エネルギー等のマルチフラクタル関数は,1変数のものが考えられてきたが,多次元の力学系の不変集合は方向により拡大率が異なり,1変数のマルチフラクタル関数では十分にその特徴を記述することができない. 本研究では方向によって縮小率の異なるフラクタル集合として,自己アファイン集合を考え,その上での不変測度に対して2つの特異性を変数としてもつ特異性スペクトル,及び2つの逆温度パラメータをもつ自由エネルギーを定義した.ある条件のもとで自由エネルギーの2つのパラメータでのルジャンドル変換が特異性スペクトルと一致することを示した. また,3次元の自己アファイン集合に対して,2つの次元を変数としてもつ次元ペクトル,及びそれに対応した自由エネルギーを定義した.3次元自己アファイン集合上の自然な測度を平面上に射影したものは,2次元のアファイン変換の族に対して不変となり,その2変数特異性スペクトルと測度の自由エネルギーのルジャンドル変換とが一致し,その結果,次元スペクトルとその自由エネルギーの変形ルジャンドル変換とが一致することがわかる.このことから,3次元自己アファイン集合のハウスドルフ次元を縮小率の対数の比2つを逆温度としてもつ自由エネルギーとして表すことができる. これらの結果をより高次元に拡張することで,3変数以上のマルチフラクタル関数とそれらの間のマルチフラクタル公式,及び3変数以上の次元スペクトルの同様な性質を示すことができる.
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