研究概要 |
古田が1987年にレブナー、ハインツ不等式の拡張である古田不等式を発見してから、作用素論におけるこの分野の発展はめざましい。特に、古田不等式の不思議な形式とそれを満たす指数p, q, rの性質については、直接的には、安藤、日合のlog-majorizationの不等式を含むgrand古田不等式が発見されたが、それ以外にもchaotic orderに関する重要な不等式がいくつか導かれた。Aluthgeは古田不等式とAluthge変換を利用してp-hyponormal operatorの性質を解明した。本研究は古田不等式の発展とp-hyponormal, log-hyponormal operatorの解明を目指すものである。 本研究で棚橋はgrand古田不等式のbest possibilityを示し,古田不等式がBanach *-algebraでも成立することを示した。またlog-hyponormal operatorがp-hyponormal operatorのp=0に対応する性質を持つことをPutnam不等式、angular cutting等を通して示した。また、内山らと共同してp-hyponormal, log-hyponormal, p-quashyponormal, class A operatorのスペクトラムの孤立点に関するRiesz idempotentの性質を解明した。また、Heinz-Katoの不等式の一般化を図り、Schwarz型の不等式を証明し、さらにその不等式をみたす作用素単調関数を特徴づけた。また、長と共同してAluthge変換によるjoint spectrumの挙動を明らかにした。また、log-hyponormal operatorのtensor積はlog-hyponormalであることと、その逆も成立することを示した。 武元はフォン・ノイマン環の前共役空間を考えて,フォン・ノイマン環の元に数域の概念を導入し,ヒルベルト空間上の作用素からなるフォン・ノイマン環の元の数域については,従来の数域の概念と同等であることを示した。その結果,その作用素から生成されるフォン・ノイマン環の*-同型によってその作用素の数域が保存されることを証明した。 三浦は正錐をもつ複素ヒルベルト空間に対して、その上の2つの有界作用素の差がその錐体を保存するときに順序がつくとする半順序を導入し、標準ヒルベルト空間においてのラドン・ニコディム型の定理を示した。さらに、行列順序付け標準ヒルベルト空間においてヒルベルト・シュミット型の作用素に関しての優位性の命題を完全正値写像の観点から証明した。また、標準ノイマン環同士の必ずしも*演算を保存しない準同型と、そこに横たわるヒルベルト空間同士の完全正値準同型が互いに他を誘導することを示し、特に*演算を保存する準同型に対しては、正錐の直交性を保存する場合に対応することも明らかにした。
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