研究概要 |
本研究代表者は,矯新星の爆発に関して,円盤不安定性モデルというパラダイムに基づく統一モデルを提案した。このモデルは,降着円盤の「熱的不安定性」と「潮汐不安定性」という二つの不安定性を組み合わせることにより,バラエティに富む矮新星の光度曲線を統一的に説明するモデルである。特に、SU UMa型矮新星のスーパーアウトバースト現象に関して、本研究代表者が提案した「熱-潮汐不安定モデル」は、TTIモデルと略称され、現在その有効性について世界的に活発に議論されている。本研究課題に関連して,平成12-15年度に行った研究実績は以下のようである。 (1)矮新星EG Cncの再増光現象のモデルの提案:矮新星EG Cncで観測された再増光現象に対する新しいモデルを提案した。(2)や座WZ星の早期ハンプ現象:や座WZ屋の「早期ハンプ」現象の解釈として、連星の質量比が極端に小さい場合、爆発に伴って降着円盤が膨張し、2:1レゾナンスによる潮汐二本腕アームが出来るためであるという解釈を提案した。(3)矮新星の質量輸送量増大モデルの有効性の再検討:おおぐま座SU型の大規模爆発について、「質量輸送量増大モデル」を支持するとされる観測事項を再検討した。その結果、いずれの証拠も不十分で、質量輸送量増大モデルをサポートする証拠とはならないことを明らかにした(4)スーパーハンプ光度曲線による降着円盤のヘリカル・トモグラフィー:矮新星矮新星WZ Sgeで観測された複雑なスーパーハンプ光度曲線の新しい解析方法を提案した。(5)矮新星WZ Sgeの2001年の爆発の解釈:矮新星WZ Sgeの2001年の爆発の解釈を行った。結局、WZ Sgeの今回の爆発の色々な現象は基本的にはTTIモデルでうまく説明できること、質量流入量の増加は必要ないことが結論された。
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