研究概要 |
^<28>Si+^<28>Si分子共鳴状態について,スピン非整列を示す「粒子-粒子-ガンマ角相関データ」を分析し,共鳴状態の構造について一定の結論を得た.理論的には,高スピン重イオン共鳴の分子的模型を用いて部分崩壊幅を算出し,R-matrix散乱振幅から,フラグメントより二次的に放出されるガンマ線強度を計算できる.実験はスピンベクトルが反応面に平行であることを示すので,この様な特殊な核構造が分子共鳴のどの様な運動モードで起こるかを明らかにした. スピンベクトルが反応面上に揃う機構としては以下のことが予想された。^<28>Si+^<28>Siの安定構造はoblate変形した^<28>Siがその赤道面で接している様な配位である.この安定配位では二つのパンケーキが並んで平面に置かれたような形状となるので,全体的には,巨大prolate変形した非軸対称回転子と見なせる.この様な非軸対称回転子が超高スピンで回転すればモーメント最大となる軸の回りに回転しやすくなり,K-mixing,すなわちウォブリングモードが発現すると予想される.このとき^<28>Siの対称軸は反応面に垂直となるが、スピンは対称軸に垂直なので反応面上にある。この様な回転モードは分子的基底状態とバタフライモードで可能である。もう一つの可能性はより単純なものである。2つの^<28>Siがその重心を結んだ軸の回りに互いに逆回転して捻れるタイプの運動(ツイストモード)で実現され、スピンは相対ベクトルに平行になる。 これら分子的基底状態と励起状態の3ケースについて角相関を検討した結果,以下の結論を得た.バタフライ励起モードなどの振動励起状態ではスピンベクトルは反応面に平行であるものの,振動面に垂直な方向に揃いすぎて実験との一致が良くない.また,ツイストモードでは分子軸方向にスピンが揃ってしまい,これも実験と一致しない.ウォブリングしている基底状態では,スピンの向きは反応面上で特定の方向に偏らないので,これが一番妥当である.
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