研究概要 |
カイラル・クォーク・ソリトン模型の枠組みで、核子のツイスト2の非偏極および縦偏極パートン分布関数の理論計算を完成させた。模型はスケール発展の初期エネルギーを除けば一個の自由パラメターも含まないにもかかわらず、最近の高エネルギー深部非弾性散乱の実験データの定性的に注目すべき特徴のほとんど全てを非常に良く再現する。それらは、F^p_2(x)-F^n_2(x),F^n_2(x)/F^p_2(x)に対するNMCデータ、d^^-(x)-u^^-(x)に対するNMCデータおよびE866データ、そしてまた、陽子、中性子、重陽子の縦偏極g^p_1(x),g^n_1(x),g^d_1(x)に対するEMCおよびSMCデータ等々である。私達はまた、模型をフレーバーSU(3)に拡張し、ストレンジ・クォークを含む核子中の軽いフレーバー・クォークの分布に対する予言を与えた。この研究で特に注意を払って解明されたのは、、d^^-(x)-u^^-(x),、d^^-(x)/u^^-(x),Δu^^-(x)-Δd^^-(x)のような観測量に反映される軽い"海クォーク"のフレーバー非対称性と、s(x)-s^^-(x),s(x)/s^^-(x),Δs(x)-Δs^^-(x)のような量に現れるストレンジネスを持ったクォークの粒子・反粒子非対称性である。更に、フレーバーSU(2)の模型の枠組みの中で、核子のスピン構造関数g_2(x,Q^2)を調べた。g_2(x,Q^2)のツイスト3の部分の寄与はBjorken変数xが小さな領域では無視できない寄与を与えるが、対応する3次のモーメント∫^1_0x^2g^^-_2(x,Q^2)dxは非常に小さく最近のE155の示すデータとコンシステントである。私達はまた、QCD真空の自発的カイラル対称性の破れのシグナルと考えられる零でないクォーク凝縮が、核子のカイラリティ奇、ツイスト3の分布関数e(x)のx=0にデルタ関数型の特異性をもたらすことを証明した。実験的には、πNシグマ項と関係する1次のモーメントの著しい破れとして観測されるであろうe(x)のこの特異性は、非自明なQCD真空構造が、その局所的な励起としての核子の観測量に現れる希有の例を与えるものと解釈できる。
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