クォーク・グルーオンプラズマ(QGP)や超新星内部(SN)等を対象とする非平衡量子場系を扱う摂動論の構築は、様々な反応の結果として系から放射される種々のシグナルの解析、及びそれらの反応の結果として生じる系の様相の時間・空間的変化を決定する目的でなされる。この研究では非平衡量子場系を扱う新しい摂動論の構成を行った。この摂動論は、従来の摂動論では現れたピンチ特異性が現れず、系の様相の変化を記述するポルツマン方程式が理論の枠組それ自体から導出されるという特徴をもっている。 QGPを翅する量子色力学(QCD)のカイラル相転移を記述する有効理論であるO(N)線形シグマ模型(現実にはN=4)に支配される非平衡系を記述する摂動論を構成した。系内で起こる様々な過程の反応率を計算する摂動計算則を構成し、それらの反応の結果として相転移が如何に進行するかを記述する新しい枠組みを構成した。次いで、QCDのグルーオン等のゲージ粒子を含む非平衡系を扱い、ゲージ粒子の伝播子を構成することを通じて摂動論的枠組みを構成した。更に、QCDのクォーク等のフェルミ粒子を含む非平衡系を扱う摂動論を構成した。これらの研究により、標準理論(QCD、電弱理論)や量子電磁力学(QED)で記述される非平衡系の一貫した扱いが可能となった。 構成された枠組みの応用として、超新星爆発環境下でのニュートリノの生成・崩壊を通じての転換を研究し、地球上で観測される可能性のあるニュートリノのスペクトルに特徴的なピーク構造が現れることを見いだした。
|