研究概要 |
平成12年度より平成14年度の間の研究成果の概要を以下に列挙する。 1.ランダム位相近似による応答関数計算と歪曲波ボルン近似による核反応計算を合体させた連続状態への準弾性散乱の解析手法の改良,完成 従来より段階的に改良してきたが,今回,核子の有効質量の空間依存性,空孔状態の分散幅を取り込んだ改良を完成させ,全手法の定式化の詳細をPhys.Rev.Cに発表した。これにより準弾性散乱(p^^→,n^^→)反応の実験結果の再現性が飛躍的に改善された。 2.2段階過程計算の改良 上記の理論はスピン縦断面積を説明するが,スピン横断面積は過小評価する。そこで2段階反応過程を取入れてきたが,今回従来のオンエネルギーシェル近似を用いない計算を可能とし,上記の応答関数計算の改善も取込み理論の信頼性を高めた。その結果スピン横断面積の問題は大幅に改善された。 3.346MeVでの^<12>C(p^^→,n^^→)反応の移行運動量依存性の実験的研究 上記二つの理論によりRCNPにおける表題の実験を解析した。実験結果の再現に不十分な点はあるが,運動量依存性の大局的変化は説明でき,次項に述べる大きな成果をあげた。 4.アイソベクトル・スピン縦応答関数のエンハンスの確認とランダウ・ミグダル・パラメータの決定上記実験の解析結果は,アイソベクトル・スピン縦応答関数のエンハンスを強く示唆し,20年来探索していたパイオン凝縮の前駆現象の有力な兆候の発見したといえる。また,応答関数計算に用いる有効相互作用を規定する3つのランダウ・ミグダル・パラメータを実験を出来るだけよく再現するよう調節して求めた。結果は従来しばしば用いられたユニバーサリティ仮説を否定するもので,ガモフ・テラー型ベータ遷移の強度分布から求められた値と整合するものであった。現在論文執筆中である。
|