研究概要 |
研究の第1の目的は,異なるランダウ準位に属する偶数分母状態が何故異なる基底状態を持つのかについて包括的な理解を得ることであった.これについては,ハートリー・フォック法,及びより正確な結果の得られるDMRG(密度行列繰込み群)法を用いた研究を行ない,ランダウ準位の違いに起因する相互作用の相違により,実際にフェルミ液体状態,ペア状態,ストライプ状態という異なる基底状態が得られることを明かにし,更に占有率による基底状態の変化を下から3番目と4番目のランダウ準位について明らかにした. 第2の目的はストライプ相でのストライプの配向についての理解を得ることであったが,これについてはハートリー・フォック法により,2次元系表面の形状に起因する長周期のポテンシャルが存在する場合には,ポテンシャルの向きとは直交する方向にストライプが配向することを明らかにし,その原因がストライプに沿った方向でウィグナー結晶への不安定性が生じ,フェルミ準位にエネルギーギャップを生じる結果,圧縮率に異方性が生じることにあることを明らかにした. 更に,下から2番目のランダウ準位におけるペア状態に対して,2層系では層間の距離の変化によって,距離が0の場合のペア状態がどのような移り変わりを示すかを調べ,層間距離とトンネリング強度の平面での相図を得た. この他,2番目のランダウ準位については任意の占有率での基底状態を調べ,2層系では,全占有率が1の場合での基底状態の層間距離依存性を調べ,幾つかの新しい知見を得ており,これらについては投稿の準備を行なっている.
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