研究課題/領域番号 |
12640315
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
固体物性Ⅰ(光物性・半導体・誘電体)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
秋重 幸邦 島根大学, 教育学部, 教授 (50159331)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2001年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2000年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
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キーワード | チタン酸バリウム / ダイポールグラス / 強誘電性 / ペロブスカイト酸化物 / 構造相転移 / リラクサー / 酸素欠損 / K添加チタン酸バリウム / 相転移 / 転移温度 / ペロブスカイト構造 / リサクサー / BaTiO_3 |
研究概要 |
チタン酸バリウムは強誘電体の代表的物質であり、数多くの研究がなされている。高温側から、T_<C-T>=400K、T_<T-O>=290K、T_<O-R>=200Kで構造相転移を起こし、結晶系が立方晶、正方晶、斜方晶、菱面体晶と低下する。自発分極は正方晶で[001]方向、斜方晶で[011]方向、菱面体晶で[111]方向を向く。最近、我々は、引き上げ法で育成した高純度光学用単結晶を用いて低温誘電測定を行なったところ、低温菱面体晶内の100K近傍に誘電率が2000にも達する緩和型の誘電異常(ダイポールグラス転移)を見出した。この間の研究によって、このダイポールグラス転移について、次の点を明らかにした。 (1)この誘電異常は、[111]方向に分極をそろえ単分域化した試料で顕著であることから、多分域試料でみられる分域壁の運動による誘電分散とは本質的に異なる。(2)誘電率の温度依存、周波数依存がPbMg_<1/3>Nb_<2/3>O_3に代表されるリラクサーの誘電特性と類似しており、ペロブスカイト酸化物に共通の性質と考えられる。(3)ダイポールグラス転移での緩和時間τの温度依存は、Vogel-Fulcher式、τ=τ_0exp[E/(T-T_0)]、で表される。ここで、τ_0は温度無限大での緩和時間、T_0はVogel-Fulcher温度、Eは定数である。即ち、ガラス転移温度T_gに近づくにつれ、急激に緩和時間が増大し、T=T_0無限大になる。(4)静水圧下での誘電測定の結果、圧力の増大と共に、T_0は増加し、Eは低下することが分かった。T_0の圧力勾配が正であることは、過冷却液体等のガラス転移と同様であるが、チタン酸バリウムの転移温度の圧力勾配が負であることとは逆となっている。このことは、このダイポールグラス転移が、チタン酸バリウムの構造相転移とは直接的に関係しないことを示している。松江での高圧研究会(2002年1月)で報告。(5)弗化カリ(KF)を融剤としたフラックス法で単結晶試料を育成した。この方法では、融剤のKが必ず不純物として混入する。融剤の組成を調整することで、積極的にKを混入させることができ、Ba_<1-x>KxTiO_3のxが0.01から0.03の結晶を育成した。誘電測定の結果、これらの結晶ではダイポールグラス転移は現れないことが分かった。即ち、問題としているグラス転移は高純度試料に特有な現象である。強誘電転移温度T_<C-T>はK濃度の増加に比例して低下するので、x=0に外挿するとT_<C-T>=400Kとなり、引き上げ結晶のT_<C-T>とほぼ同じになる。Kはアクセプターとして働き、誘電損失を小さくする効果があることなども明らかとなった。K添加チタン酸バリウム単結晶について、マドリッドでの第10回強誘電体国際会議(2001年9月)で報告した。
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