研究概要 |
今年度は昨年度に引き続き、コランダム構造について測定を行った.試料は,ヘマタイト(Fe_2O_3)および酸化クロム(Cr_2O_3)である.これらの物質は酸素の作る8面体の中に鉄あるいはクロムがある.それぞれ,FeおよびCrのK-吸収端でATS散乱の測定を行った.得られた主な結果は,下記の通りある. 1.それぞれの吸収端の直下において(003),(009)のATS散乱が観測された. 2.ヘマタイトにおいては,その方位角依存性は3回である. 3.一方、酸化クロムにおいては6回の方位角依存性が認められた. 4.この,方位角依存性より,ヘマタイトのATS散乱は双極子-4重極子遷移と4重極子遷移の干渉によることを明らかにした. 5.一方、酸化クロムのATS散乱は4重極子遷移によるものである. 6.また,ヘマタイトにおいては,非共鳴領域に2回の方位角依存性を示すATS散乱を観測した. 7.一方,酸化クロムでは,非共鳴領域にATS散乱は観測できなかった. 8.この,非共鳴領域のATS散乱波,磁気散乱によるものであり,両者の相違は,その磁気構造によることを明らかにした.
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