研究概要 |
小惑星表面にレゴリスが存在するかどうかを調べるための固体衝突実験と理論的考察を行った.レゴリスは表面に外部から物体が高速度衝突し,まき上げた破片のうち脱出速度の低いもののみが再び表面にもどり堆積することによって形成される.したがって衝突にともなって放出される破片群の速度を実験的,理論的に決めた.とくに最近の探査によって物質密度のきわめて低い小惑星の存在が報告されているので,この点を考慮に入れた.ガラスビーズ集合体を電気炉で加熱して互いに焼結させ,ターゲット物体を作成した.物質の空隙率は焼結時間の調節により行われ,約4%から80%までのものが作成された.このターゲットに,2mmから7mmまでのナイロン球を速度3-4km/sで衝突させた.衝突時の様子は高速度撮影により記録された.ターゲット面に垂直方向に出される大多数の破片は回収され,その分散位置情報と,クレーターの形状を計測した.破片群の分散情報をもとに,約20m/s程度までの破片群の速度分布が求められた.空隙度が増すと破片速度が低くなる様子が定量的に明らかにされた.またクレーターの直径は空隙度が40%付近で最大になることがわかった.これらの結果にもとづいて速度分布のスケーリング則を作り,それを使用して小惑星表面上でのレゴリス層の厚さの時間的発展を数値計算によって追跡した.その結果,強度の弱い物質の場合は10-1kmオーダーの大きさの小惑星上にもレゴリスが存在することを示した.これらで得られた結果は最近のNEAR-SHOEMAKER探査機によって得られたEros小惑星の表面にレゴリスがあるという結果と整合することを示した.
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