研究概要 |
対流圏中高緯度において総観規模擾乱の活動が活発な領域であるストームトラックは,北半球冬季においては,太平洋域と大西洋域に局在化している.しかしながら,ストームトラックが東西方向に局在化する力学的メカニズムと,ストームトラックが対流圏時間平均循環場の形成に果たす役割に関する理解は十分ではない.特に,10年規模での気候変動を理解する上で重要な,中緯度海面水温分布とストームトラックとの関連について矛盾のない説明は得られていない.そこで,本研究では,総観規模擾乱の活動を表現しうる大気大循環モデル(CCSR/NIES AGCM:水平解像度T42,鉛直層数20)において,地形分布を取り除き季節を1月に固定して,様々に理想化した海陸分布と海面水温分布を与えて長時間積分を実施し,出現するストームトラックと時間平均場について解析を行い,以下のような結果を得た. 1.山岳に伴う惑星波が存在しない場合,ストームトラックの局在化には,亜熱帯ジェット気流の分布や順圧エネルギー変換率といった対流圏中上層における大気循環の東西非一様性は重要ではなく,中緯度SST分布に伴い形成される大気下層における傾圧度の東西非一様性の存在が最も重要である. 2.大気下層における傾圧度の東西非一様性は,ストームトラックに伴う非断熱加熱分布により励起された定在性惑星波によって維持される. 3.ストームトラックが東西方向に局在化する場合には,このような,非断熱加熱を通した総観規模擾乱と定在性惑星波との間での正のフィードバック効果の存在が必要である.
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