研究概要 |
本研究では有明海,特に八代海とその沿岸の領域を意識して局地気候予測のためのモデルを考えた.定量的かつ理論的に考察するために二次元モデルとして,鉛直断面について外海,島,内海,陸と変化する領域を考え,内海の幅と沖合いの島の影響を考察した.その結果,島が沖合いにあることで陸の海風は弱められるが比較的長い時間にわたり変化の少ない海風となること,内海幅が20km程度以上離れていると島は独立した領域と見なされることなどが分かった.また気象衛星の海表面温度の観測によると内海は夏には水温が0-1℃高く,冬には1-2℃低いことが観測されている.二次元モデルを使って内海温度を変化させて,その影響を調べたところ,その影響領域は非常に狭い範囲に限られることが分かった.さらに広域の海の影響を調べるために,地形も考慮した九州地方の3次元モデルを考えて,海水温を九州地方で400km距離に4℃の温度傾度の分布を与えてみたが,その影響は非常に小さかった.これは大気が海表面では安定成層しており熱交換が小さいことにより温度変化が上層まで伝わりにくいことによると思われる.このように海水温の変化を考えたが沿岸領域以外では短期的には大きな影響を与えることはなさそうである.しかし,気候的な意味では大きな影響を与える可能性は否定できない.実際に,気温,雨量,日照時間,風向風速について1987-2000年14年間のアメダスデータを用いて,九州地方全体の最近の気候的な特徴とその変化傾向を調べた.九州地方を6つの気候区に分けると有明海・八代海沿岸部は西海型に分類でき,外海の影響を強く受けていることが分かった.また海岸領域では特に面している海の性質の影響を大きく受けていることが分かった.
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