研究概要 |
本研究は3年目を終了し,おおむね計画どおりの成果をえた。具体的な成果の概要は,下記のとおりである。 主として,西南日本とニュージーランドとの付加体形成と変成履歴の比較研究のため,野外調査と室内研究を行った。これらの成果の多くは学会で報告され,論文として学会誌に掲載されている。 1.最も大きな成果の1つは,西村がニュージーランド南島のOtago Schistsと隣接する弱変成付加体を調査・検討し,Coombs, Landisおよび板谷の協力をえて,American Mineralogist (2000)に掲載されたものである。この論文では,Otago Schistsの温度構造と年代極性を明らかにしただけでなく,日本の周防変成岩と付随する弱変成付加体の特性とが酷似し,沈み込み型(都城型)造山運動の特性を強調した。ニュージーランド北島の弱変成付加体(Waipapa)試料について,炭質物の結晶度(d_<002>値)と白雲母のK-Ar年代測定を行い,草稿を書きあげた。現在,オークランド大学のBlack教授と議論中である。また,中琉球弧の付加体については,一部は地質学雑誌(2001)に報告したが,今後さらに検討し,公表する計画である。 2.板谷は主としてK-Ar年代測定に従事したが,蓮華帯や三波川帯だけでなく海外の変成岩についても幾つかのK-Ar年代に関する重要な成果を地質学雑誌(2000)やGondowana Research (2002)などに報告している。 3.磯崎は日本列島の新しい地質構造発達史をプレート造山論に基づいて構築し,科学(2000)に平易に解説している。彼は西オーストラリアの太古代の岩石や南中国のP-T境界についても積極的に検討し,地学雑誌やChemical Geology (2002)に公表している。 4.西村と磯崎は,本研究成果をふまえた新しい視点からの日本列島の形成史を編み,その他4名の共著者とともに「基礎地球科学」(2002)を朝倉書店から出版した。
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