配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2002年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2001年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2000年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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研究概要 |
これまで研究代表者が明らかにしてきた白亜紀から新生代にかけての二枚貝類の外浜・前浜環境への分布拡大現象は単独の現象ではなく,はるかに巨大な生態系の再編過程の一部であり,全体としては,浅海砂礫底,岩礁などのような沿岸域への進出,逆に深海への移動,また従来からの生息地である陸棚や干潟では,内生化の進行がほぼ並行して起こった,ことが明らかとなった.木研究で明らかにすることができた具体的な事例は,(1)タマキガイ科の砂礫底への進出と大型化(2)ニオガイ科の岩礁での穿孔生活への適応,(3)足糸固着型イタヤガイ科やカキ類からなる古第三紀型砂礫底群集から遊泳性のイタヤガイ科を主体とする新第三紀型砂礫底群集への変遷,である.懸濁物食二枚貝類が,多様化とともに,それまでにも存在した生息場所に急激に進出していったのに対して,生息場所そのものが出現したために多様化したと思われるのが熱水噴出口付近を生息場とする硫黄細菌共生二枚貝類である.すなわち,大陸の分裂を起こした海洋底の拡大により,ジュラ紀以降,新たに出現した熱水噴出口に,古生代から沿岸域に存在し続けてきた還元環境の化学合成二枚貝類(たとえば,ツキガイ上科Lucinoidea)が生息場所を拡大し,さらに,この時期に沿岸域で進化した異歯類Heterodontaの中から硫黄細菌との共生を始めた二枚貝(シロウリガイ属Calyptogena)がこれに加わることによって,深海の化学合成群集が成立した,と考えられる.さらに,珪藻などの一次生産者の増大によるメタン冷湧水の増加も冷湧水域化学合成二枚貝類を多様化させた原因として重要である.すなわち,化学合成細菌を共生させる二枚貝類に関しては,熱水噴出口や冷湧水域という生息場所そのものの拡大が多様化を可能とする条件を提供し,現実に多様化が起こった.
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