研究概要 |
本研究ではODP171次航海のBlake Plateau上で掘削された1052および1053地点のコア試料を使用した.1052Aのコアに関しては1Xから21Xまで,1053では1Hから20Wまで,1セクション(1.5m間隔)につき1試料,隕石衝突層準のみ10cm間隔で試料採取を行った.その結果,以下のことが明らかとなった. 1)両者の試料とも,浮遊性有孔虫化石帯のP14からP16までの範囲にあり,中期始新世の最後から後期始新世に及ぶ.また,26の生物事件を認識することができた. 2)古地磁気層序と対比すると,始新世中期を特徴づけるAcarininaやMorozovella属の多くは,C17n.3nで絶滅し,その絶滅層凖を生き延びたAcarinina collactea, A. medizzaiなどもChron 17n. 1nまでに絶滅する.この他,Globigerinatheka semiinvolutaの初出現はC17n.2n, Cribrohantkenina inflataはC16n.2nであることも明らかとなった. 3)群集解析の結果,中期始新世ではAcarinina, Morovella属が30〜40%を占めるが,絶滅後(37.32Ma)では,Globigerinatheka, Subbotina属が30〜50%を占めるようになる. 4)隕石衝突事件は,1053A地点で認められる.後期始新世の浮遊性有孔虫層序P15帯の中にあり,Globigerinatheka属の急減層準の上位,Porticulasphaera semiinvolutaの消滅層準の下位に認められる.古地磁気層序から計算した結果,隕石衝突層準は35.636〜35.634Maの年代を示すことが分かった.しかし,絶滅層準前後では浮遊性有孔虫に関して,大きな群集変化や絶滅事件は生じていない.
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