研究概要 |
上部マントルかんらん岩中には,上部マントルを上昇・通過した高温マグマの通路(マグマチャネル)がつくられる.造山帯レルゾライト中のダナイトチャネルやオフィオライト質ダナイトークロミタイトチャネルは,その代表例である. 本研究では,(1)北海道神居古潭帯岩内岳かんらん岩体および日高変成帯幌満かんらん岩体からダナイト-クロミタイトチャネルおよびその壁岩かんらん岩のサンプリングを実施し,パキスタン北部マラカンドおよびトルコ南西海岸フェティエのオフィオライト岩体のサンプルとともに,チャネルの産状記載・岩石組織と主要鉱物の記載を行った.とくに(2)岩内岳および幌満かんらん岩体については,チャネルを横断する系統的サンプリングを実施し,岩石組織特性および構成鉱物の形態特性の抽出を試みた.(3)チャネルかんらん岩に含まれる主要構成鉱物について,EPMAで主成分分析を,幌満についてはLA-ICPMSを用いて微量成分分析を行った.分析結果をもとに,(4)それぞれのかんらん岩を通過した玄武岩質初生マグマのメルト成分の特性抽出を試みた.また,通過マグマと壁岩との相互作用も検討した. 岩内岳かんらん岩体のダナイト-クロミタイトは,高Mg#,高Cr#で特微づけられる。その通過マグマは高Mg安山岩質ないしボニナイト質マグマであったと推定され,壁岩ハルツバージャイトとの接触部に大規模な反応帯(置換性ダナイト)が形成されていることがわかった。また,幌満かんらん岩体下部に多数のダナイトチャネル群が認められた。その通過マグマは,壁岩と平衡共存できるMORBタイプのマグマやもっと涸渇したかんらん岩を起源とするマグマなど多様で,そのチャネリング様式にも違いが認められた.通過マグマが同じ場合でも,かんらん岩壁岩の違いによって壁岩の改変(置換性かんらん岩の成因)が異なることも判明した.
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