研究概要 |
1.メラノフロジャイトの正方晶系低温型の結晶構造解析にMt.Hamilton(Califomia)産試料を用いて初めて成功した.X線単結晶法により空間群,構造決定を行い,さらに4軸型自動回折計による精密構造解析を行った.本鉱物は高温型の超構造であり,これによりメラノフロジャイトの高温型-低温型構造転移は1次の(2次に近い)転移であることが明らかになった. 2.低温型から高温型にかけて構造変化をX線回折法により調べた.格子定数の温度変化により転移点が70℃にあることを明らかにした.原子の平均位置(時間・空間)について求めたSi-O結合距離は低温型範囲では負の膨張を示すが高温型ではほぼ一定である.Si-O距離とSi-O-Si1角度の間には明瞭な負の相関が認められる. 3.酸素原子のうちいくつかは低温においても著しい原子平均二乗変位を示し,無秩序分布の可能性を示している. 4.最大エントロピー法によって,高温型の精密電子密度分布の解析を行なった.その結果,5角12面体はほぼ完全にメタン分子によって占められ,それらの優先される方位と無秩序配置について明らかにした. 5.1000℃までの加熱によりゲスト分子が開放される事が明らかになった.またこうして得られたゲスト分子を含まない系についてX線単結晶回折実験を行い,この場合には室温においても分子を含む場合の高温型と同じ空間群が維持され,相変化が生じない事が明らかになった.これは既に国外研究グループによって発表されているNMR研究による推定を否定する結果である. 6.ゲスト分子を天然メラノフロジャイトと同様に含む(12面体空隙の全てをメタン分子が占め,14面体の約半分をN_2とCO_2分子が占める)系のMDでは,立方基本構造-正方超構造(2x2x1)の構造転移が実現され,実験事実を再現している.これらの事はシリカ包摂化合物の構造変化にとってゲスト分子が重要な働きをしている事を示すものである.
|