研究概要 |
ゼオライトヒートポンプの運転により,完全にサイクル運転が確認された.このサイクルにおいて,H_2Oを独立成分と考えて,その間の熱収支をシミュレートしたところ,ゼオライト中の水(ゼオライト水)の熱容量が,自由水の熱容量の2倍近いことが明らかになった.即ち,25℃から100℃までの加熱により,ゼオライト水のエンタルピーの増加はH_2Oの1mol当り10.6kJであるが,純水のそれは5.25kJである.ただし,実際にはゼオライト水は加熱により脱水するので,この計算は100℃まで脱水しないと仮定した場合の結果である.現実には,Mg53-Aの場合,自由水の蒸気圧と平衡に存在する場合,100℃では3-4%の脱水がある.しかし,色々な脱水レベルにおける25℃における水和エンタルピーの値は,-65kJ/mol付近でほぼ一定であり,この計算は100℃で脱水する水の微分水和エンタルピーと考えて大差無い.従って,ゼオライト水の熱容量の大きいことは,この含水レベルの水分子の挙動を表している.ゼオライトの細孔中で水分子は25℃から100℃の間において,極めてドラスティックな変化をしており,平均の熱容量の値として比較すると,物質界で最も大きな熱容量を持つ水の約2倍の熱容量を持つという極めて異常かつ興味深い結果である.このことが,ゼオライトヒートポンプにおいて,低温熱源が有効に利用できる理論的背景を説明している.平衡蒸気圧の温度変化より,ゼオライト水のエントロピーが極めて小さいことが確かめられた.菱沸石とその脱水処理を行なったものの単結晶の構造解析を行ない,占有率の低い水を含めて,化学分析値を説明し得るゼオライト水のサイトを決定できた.脱水する場合の水の挙動の一部が推定された.
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