研究概要 |
当研究の目的は,従来から行ってきた古土壌の研究をさらに発展させ,風化作用における微量元素の挙動,有機物の挙動を明らかにするとともにそれに及ぼす生物活動の役割を明らかにすることである. 当該研究期間において次の点が明らかになった:1.カナダ,オンタリオ州プロントの花崗岩上に発達した古土壌について(1)顕微鏡観察,主要元素および微量元素の挙動は,カナダ,オンタリオ州プロントの古土壌がその場で生成した土壌であることを示す,(2)primary REE phosphateの風化によりsecondaly REE phosphateが形成されているが,微量元素も含む全岩の化学分析およびEPMAによる分析から,それが鉄の酸化物と密接に関連している可能性が不唆される,(3)Tauntonら(2000)により,現在の風化におけるREEの挙動は生物活動によりコントロールされていると報告されていることから,現在の花崗岩の風化,特にapatiteの風化における元素の挙動と生物活動の役割を明らかにし,プロントの古土壌と詳細に比較検討することは,25億年前の風化における鉄,リンおよび希土類元素の挙動と生物活動との関わりを明らかにすると考えられる.2.西オーストラリア,ピルバラ地方に27.7億年前に噴出したMount Ree玄武岩中にみられる変質帯は,従来古土壌と考えられ,当時の還元的な大気環境の有力な証拠とされてきたが(1)EPMAによる変質鉱物の分析や元素分布を含む当該研究で得られた新たなデータは,これが玄武岩の噴出と同時に起こった還元的な熱水活動による変質物であることへの新たな証拠を与える,(2)またこの変質帯から抽出された有機物の炭素安定同位体比はメタン生成細菌の存在を示唆し,メタンを含む還元的な熱水とメタン生成細菌の関連が今後の興味深い研究課題である.
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